大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(て)2号 決定

〔抄 録〕

先ず請求人に対する当庁昭和二十七年(う)第三、一八一号詐欺被告事件の記録によれば、右事件について請求人は、長野地方裁判所において同年七月二十五日有罪の判決を受け即日控訴の申立をなし、又保釈の請求をなしたところ、同裁判所は、同年八月九日これを容れ保釈の決定をしたけれども、保釈保証金未納のため同月二十六日に至り漸く釈放されるに至つたこと、その後同年九月三十日の控訴趣意書提出期限の末日に請求人本人作成の控訴趣意書が提出され、その後に至るも所論とは異なり請求人自身において弁護人を選任しないため、当裁判所において同年十一月十八日弁護士龜井周策を国選弁護人に選任したこと、請求人は同年十一月十八日の第一回公判期日召喚状を同年十月十一日前記保釈決定による制限住居において受領したが右公判期日延期願を提出(右願書は同年十一月十九日当庁受附)して右公判期日に出頭せず、前記弁護人出頭右公判期日は裁判長においてこれを同年十二月九日と変更指定し、右公判期日の請求人召喚状は、前記住居において同居人たる実母丸山シズエ受領右公判期日においては(この期日においては請求人又は検察官側から何ら延期の申立をした事跡なし、次の十二月二十三日の公判期日も同様)被告人不出頭の儘出頭した前記弁護人において前記請求人作成の控訴趣意書に基いて弁論した上結審し、裁判長は同月二十三日午後一時の判決宣告期日を指定し、この公判期日の請求人宛召喚状は同月十二日篠ノ井地区警察署において請求人自身受領、右公判期日においては請求人不出頭右弁護人出頭の上控訴棄却の判決の言渡があつたこと、その間同月十一日東京高等検察庁から請求人が目下別の事件で篠ノ井地区警察署において勾留取調中なる旨の通知のあつたこと右判決言渡後裁判所から請求人に対し所論のような通知をした事跡のないことを認めることができる。以上の本件の経過から見れば成程当裁判所が前記控訴棄却の判決をした当時請求人は篠ノ井地区警察署に勾留中であつて請求人が当裁判所の各公判期日に出頭しなかつたのは、或はその為であつたであらうと推測されるのであるが、控訴審では現行法の建前では事後審であつて覆審又は続審ではないから再び事実の審理を繰返さないのが原則であり、又被告人のためにする弁論は弁護士である弁護人でなければこれをすることができないことになつており、公判期日において被告人の出頭は必ずしも要求されていないし、又たとえ出頭しても被告人自ら発言したり弁論したりすることは原則として許されていないのであるから、本件においても被告人たる請求人不出頭の儘請求人自身弁護人を選任しなかつたので国選弁護人を選任してこれに弁論をさせて審理を終結したことは、洵に相当であつて些かも不都合ではないのである。而して本件において同年十二月二十三日の右裁判宣告期日については請求人はその前に適式にこれが通知を受けたのであるから同期日に裁判の宣告があつたことを知りえた筈であり、従つてその当時請求人が警察署に勾留されていて本件各公判期日に出頭できず且つ上訴期間を徒過したとしても請求人の上訴権の行使が妨害された事跡のない限り単に以上の理由のみを以つて上訴権回復の事由とすることはできないし、又右のような上訴権行使妨害の事実の疎明は全く存しない。次に請求人の主張する本件控訴棄却の通知を上訴権消滅後に受け取つたという点については、何人がその通知をしたのかその意不明瞭であるが、裁判所としてはこのような通知の義務を訴訟法上負担しているのでなく又現にこのような通知は発していないのだから、或は弁護人からの通知の趣旨と思われるのであるが、仮にこのような事実があつたとしても、年末年始に郵便物が輻輳しその集配事務が相当日時遅延することは最近の実状であるから、これが通常ならば上訴期間内に裁判所に到着する筈の上訴状が右のような事由によつて上訴期間を経過して到達したというような場合ならば一応上訴権回復の事由の存否の判断の対象となり得るのであるが、本件の如き被告人弁護人間の判決の結果の相互連絡のためのような場合においては、以上のような実状にあるとき、この点に注意を払わないで重要な文書を郵便によつて送付しそれが延着して回復すべからざる不利益を受けたとしても、これを以て自己又はその代人の責に帰することができない事由によつて上訴期間を徒過したものと解することは到底できないところである。その他本件において刑事訴訟法第三百六十二条に規定する上訴権回復の請求を理由あらしめる事実を窺い得べき何らの疎明がないので、本件請求は棄却するの外はない。

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